睡眠時無呼吸症候群の治療


睡眠時無呼吸の治療は重症度、閉塞部位、肥満や鼻閉の程度などによって選択されます。

一般的には重度(無呼吸低呼吸が1時間に20回以上)であればCPAP治療が第一選択、軽度(無呼吸低呼吸が1時間に5-20回)であれば口腔内装置が第一選択となります。また上気道の評価によって適応があれば手術治療も行われます。

睡眠時無呼吸は肥満、加齢、鼻閉、軟口蓋形態異常、下顎後退、甲状腺機能低下、神経変性疾患ほか、多要因が重なって形成されることが多いため、治療器具と手術を組み合わせて治療を行う場合もあります。

鼻づまりはいびきの原因となるだけでなく、CPAP治療などの妨げにもなりますので、鼻閉がある場合は全ての治療と並行して鼻の治療を行う必要があります。肥満が原因のひとつとなっている場合は適切な栄養指導を受け、減量に取り組むことも大切です。

また、寝酒や遅寝遅起きなどの不適切な睡眠習慣があると、せっかく無呼吸の治療を行っても良い眠りは得られません。

「睡眠衛生」と呼ばれる、良い眠りを得るために必要な生活習慣や睡眠環境について知って頂くことも重要です。

治療の流れ


CPAP(シーパップ、経鼻持続陽圧呼吸療法)

CPAP

鼻マスクを介して閉塞した気道に持続陽圧を付加するCPAPは、睡眠ポリグラフ検査で1時間あたりの無呼吸低呼吸数(AHI)が20以上であることが確認されれば健康保険での使用が可能です。またAHIが40以上の場合は脳波検査による睡眠障害の証明がなくても保険適用となります。この治療方法の長所は、気道の虚脱を防ぐ圧を加えることで重症のOSASに対しても十分な治療効果が得られることです。しかし高い圧負荷によって入眠困難や中途覚醒を生じることもあるため、適正な圧力で使用することが重要です。圧が一定の固定圧式だけでなく、最近では呼吸状態に応じて圧を自動的に変化させるオートCPAPも広く用いられており、加温加湿機能なども高性能化しています。しかし、実際の継続使用率は50-80%と報告されており、長期的な治療ができない患者様も少なくありません。安定した効果を持続させるためには治療開始後も、合併症治療を含めたきめ細かな管理指導を受けることが大切です。


当科で取り扱っているCPAP機種

CPAPのメモリデータで分かること

CPAPの日々の使用状況はメモリーカードに記録されています。外来受診の際にメモリーカードをダウンロードし、その結果をもとにした管理指導を行います。メモリーカードにはCPAPの使用頻度や使用時間、CPAP使用時の呼吸障害の程度、マスクからの空気洩れの量など多くの情報が含まれます。CPAPが上手く使えない場合にはデータを詳細に解析し、その対処について検討します。

CPAPコンプライアンスレポートの例

当外来におけるCPAP管理のフローチャート

出典 宮崎総一郎、北村拓朗 口腔・咽頭疾患 歯牙関連疾患を診る ENT臨床フロンティア 2013


CPAP管理のフローチャート


口腔内装置 (oral appliance: OA)         

マウスピースにより気道の狭窄を防止する治療法で、睡眠検査によっ睡眠時無呼吸症候群と診断されれば保険適応となります。使用操作が簡便で携行が容易であるという長所がありますが、顎関節痛が生じうる点、歯牙が十分保たれていないと作成困難という欠点もあります。なおAHIが30を超える重症の方や、高度肥満を有する方などでは有効性が低下するため、軽症から中等症の睡眠時呼吸障害に適した方法と考えられています。 口腔内装置が必要と診断された場合、産業医科大学病院の歯科口腔外科や若松区近隣で口腔内装置の作成を行っている歯科医院の紹介をいたします。

口腔内装置
口腔内装置

手術治療

鼻閉の手術

鼻閉を改善する手術治療として、鼻中隔矯正術、粘膜下下鼻甲介骨切除術、内視鏡下鼻副鼻腔手術などを行っています。これらの鼻閉治療はCPAPを快適に使用するためにも有効です。手術によってCPAP治療に必要な圧力が平均して2cmH2O低下するとも報告されています。

口蓋扁桃摘出術および軟口蓋形成術

子どもの睡眠時無呼吸の原因のほとんどが、口蓋扁桃(へんとうせん)や鼻のつきあたりにある咽頭扁桃(アデノイド)の肥大によるものであり、手術治療により良く改善します。また成人でも扁桃肥大があれば手術治療が有効な場合があります。いびきの振動源となる口蓋垂(のどちんこ)が長かったり、その周囲の粘膜が過剰であったりする場合には軟口蓋形成術というのどを広げる手術を行うことで、呼吸障害を軽減できます。舌や扁桃の大きさ、肥満度、年齢などによって手術効果の予測が可能で、一般的には口を開けて口蓋垂の根元が観察でき、かつ扁桃がのどの4分の3以上を占める程大きな場合、手術効果が高いとされています。

術前
術前
術後
術後

口蓋扁桃摘出+軟口蓋形成術(口蓋垂軟口蓋弁)前後

出典 北村拓朗、宮崎総一郎 鼻アレルギーフロンティア 2012

のどの形態からみた咽頭拡大手術の成功率

(UPPP: 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)