慢性中耳炎について 

ーQOLを向上させるために根本治療をー

先に、慢性の経過をたどる中耳炎には、滲出性中耳炎、癒着性中耳炎、慢性(化膿性)中耳炎、真珠腫性中耳炎などがあると書きましたが、このうち「慢性(化膿性)中耳炎」とは鼓膜に穴(穿孔)が開いていて化膿(細菌感染)を繰り返すもので、真珠腫ではないものを指し、単に「慢性中耳炎」とも呼ばれます。主な症状は難聴と耳だれ(耳漏)で、通院治療でも一時的に耳漏は止まりますが、根治するのは困難です。


1)成因

最初に急性中耳炎の形で中耳に細菌感染が起こることから始まります。急性中耳炎はかぜひきがきっかけで起こるのが一般的です。急性中耳炎は耳痛を伴い、激しい感染の場合には鼓膜が破れて中にたまった膿が出てきます。また耳鼻科医院で鼓膜切開を行い膿を吸い出すこともあります。膿を取り除くことは除菌するためにひじょうに有効です。こうして鼓膜に穿孔が開いても、抗菌薬の投与などでうまく除菌できれば、穿孔は通常2週間~1ヶ月くらいで自然に閉鎖します。

しかし除菌がうまくいかないと、耳漏が出続けて穿孔が塞がらなくなり、慢性中耳炎となります。その後、耳洗浄やいろいろな抗菌薬の投与で耳漏が止まっても、穿孔が残ると、外から雑菌が入り易くなり、ときどき耳漏を繰り返すことになります。難聴は、穿孔により鼓膜の面積が少なくなるためと、内部に炎症の巣がはびこったまま固まってしまうことによって生じます。


2)症状と合併症

主な症状は耳漏と難聴です。難聴は当初は中程度のものですが、1020年以上の期間根本治療をせずにおくと聴覚の神経が入っている内耳が障害されてきて、しだいに高度の難聴となっていきます。内耳の障害は治療しても治すことができません。真珠腫性中耳炎と異なり骨の侵食はあまりみられませんが、頻度は低いのですが、炎症が三半規管、顔面神経、頭蓋内に及んで、めまい、顔面神経麻痺、髄膜炎などが起こる可能性はあります。


3)診断

耳鼻咽喉科を受診すれば診断は比較的容易です。鼓膜に穿孔があり耳漏が出ていれば慢性中耳炎と診断できます。診断時に特に注意しなければならないのは、鼓膜にポケット状のくぼみがないかよく観察することです。くぼみに耳垢がたまっていれば骨が侵食される一段重症のタイプの真珠腫性中耳炎の可能性が出てくるからです。進行の度合いを診断するには、聴力検査とXCTの所見が主な手がかりとなります。細菌検査も治療を進める上での重要な情報となります。


4)治療

耳漏が出ている耳に対しては、まず耳処置や抗菌薬の投与により除菌して耳漏を止めることが必要です。抗菌薬の投与法には内服・点滴などの全身投与法と点耳よる局所投与法があります。慢性中耳炎の場合にはいったん除菌できてもその後再び感染を繰り返し、治療が長期間にわたることが多いので、全身的な副作用を避けるために、主に点耳の抗菌薬を使用します。一般的な使い方としては、中耳炎の方の耳が上になるように横になり、目薬のような薬液を朝晩数滴ずつ耳の穴にたらし、1015分程度そのままの姿勢で休んでもらいます。耳の中の温度の変化で一時的なめまいが起こることがありますが、こうした場合には点耳液を手で温めてから耳にたらします。耳処置としては、耳鼻科医院に通院して耳漏を吸い取ったり、耳の中を薬液で洗浄したりします。

こうした治療によっても除菌できず、耳漏が続く場合やいったん除菌できてもすぐにまた菌が繁殖して耳漏を繰り返す場合には根本治療としての手術が必要になります。また耳漏が止まってぶり返しがない場合でも難聴は続きますから、患者さんと相談の上、手術による聴力の回復を目指します。

 

術式(手術のやり方)は、耳漏の状態、聴力の程度、CT所見などでわかる内部の状態、で決まります。手術の目標は、①病巣を取り除いて耳漏を止める、②聴力を改善させる、の2点です。

耳漏が全くなく、内部の状態もきれいな場合には、①の必要がありませんので、こうした場合には鼓膜を作るだけの鼓膜形成術で対応できます。これは耳の後ろから1cmくらいの肉片を採ってきて、鼓膜の穿孔に接着剤で貼り付けるものです。局所麻酔で1時間程度の手術で、最短だと日帰り(0泊1日入院)で行うことができます。日帰り手術は1泊以上の入院に比べて患者さんの負担が格段に少なくなるなど多くの利点があります。

これに対し、耳漏が出ていて内部に病巣がはびこっている場合には鼓室形成術が必要になります。この手術では骨を削って病巣を取り除き、鼓膜の裏にくっついている耳小骨の状態を点検した上で鼓膜を作ります。耳小骨は鼓膜で受けた音の振動を内耳に伝えるもので、ここの点検は、聴力を良くするために鼓膜を作ることと共に大事な部分です。従来はこの手術も局所麻酔で行われていましたが、昨今ではほとんどが全身麻酔で行われます。入院期間は症例によっても異なりますが、当科では2週間程度を標準としています。治療法はそれぞれの患者さんによっても異なりますから、個別にご相談いただければ幸いと思います。