鼻の病気

鼻づまりは何が悪いのか?

誰しも鼻がつまって苦しい思いをした経験があるでしょう。鼻がつまっても口で呼吸すれば窒息することはないはずなのに、何で鼻づまりは苦しいのでしょうか。ここでは鼻呼吸の大切さと鼻づまりの原因や治療について解説します。


鼻づまり


鼻呼吸の重要性

鼻呼吸には呼吸の深さとリズムを調節するという重要な役割があります。鼻腔内には鼻甲介(下鼻甲介、中鼻甲介、上鼻甲介)と呼ばれる粘膜で被われた骨板があり(図1)、鼻呼吸時にはこの鼻甲介の存在によって適度な空気抵抗が生じます。「適度な」鼻腔抵抗があることで深くゆっくりとした効率の良い呼吸が保たれますが、鼻炎などで鼻甲介が腫れると鼻腔抵抗が上がり呼吸が楽にできず、疲労感の原因となります。逆に空気抵抗が低くなりすぎても浅く早い呼吸になるため、余計なエネルギーが消費されてしまいます。口呼吸が苦しく感じるのは効率の悪い呼吸をしているためなのです。そのほか鼻呼吸には吸い込んだ空気を暖め、加湿し、濾過するといった役割があり、鼻呼吸ができなくなると、咽頭痛や口内乾燥などさまざまな症状の原因となります(図2)

 

鼻の構造
 図1 鼻の構造
図2 鼻づまりの影響
図2 鼻づまりの影響

出典 北村拓朗、鈴木秀明 「鼻閉と口呼吸」 九州歯会誌 2010


鼻づまりと睡眠

夜間の鼻づまりは睡眠時無呼吸症候群の原因となることが知られています。睡眠中に鼻腔抵抗が大きくなると、ストローを強く吸うとつぶれてしまうのと同じ原理で気道が閉塞しやすくなり、また口が開くことによって舌が後方に押されのどが狭くなります。睡眠時無呼吸症候群では睡眠の質が悪くなるため、成人では日中に眠くなり、注意力や集中力の低下で仕事の効率が落ち、また作業中や運転中に事故を起こすリスクが高まります。つまり慢性的な鼻づまりは精神生理機能にも影響を及ぼし、社会的な弊害をも引き起こしかねないのです。睡眠中は重力や自律神経の影響で日中よりも鼻がつまりやすくなるため、普段鼻づまりを自覚していない方でも、鼻づまりによって睡眠が障害されていることもあり注意が必要です。さらに最近、幼小児の鼻づまりが成人以上に影響をもたらしていることがわかってきています。


子どもの鼻づまりは要注意

近年、花粉症やハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎の増加や、離乳期以降におしゃぶりをしない赤ちゃんの増加によって、口呼吸が習慣化している子どもが増えています。幼少児ののどは解剖学的にみて口呼吸がしにくい構造になっているため、口呼吸の習慣は重症の睡眠時無呼吸を引き起こします。子どもの睡眠時無呼吸は低身長、脳の発育障害、学習障害、情緒障害(きれやすい)などの原因となり、さらには顔面骨(とくに下顎骨)の劣成長などの成長障害を起こすことも分かってきています。下顎の劣成長は治療のタイミングが遅れると、成人後にも残存し大人になってからの睡眠時無呼吸の原因となります。つまり幼小児期に「鼻づまり」を放置すると、子どもが本来持っている能力が一生を通じて抑制されてしまう危険があるのです。


鼻づまりの原因と治療

鼻づまりの原因として最も多いのはアレルギー性鼻炎です。抗アレルギー薬やステロイド点鼻薬などを組み合わせることで治療可能です。アレルギーの原因となる抗原から身を守ることも重要ですので、自分のアレルギーの原因が何なのかをあらかじめ調べておくことも大切です。また塩酸ナファゾリンなど血管収縮薬の点鼻薬は鼻づまりに対し即効性がありますが、習慣性やリバウンドがあることが知られていますので漫然とした使用は慎まなければなりません。市販されているブリーズライト®などの鼻腔拡張器具は鼻づまりに対して一定の効果がありますが、鼻甲介の腫脹による鼻閉にはあまり効果がありません。また鼻腔拡張器具にはいびきを減らす効果はあるものの、無呼吸や眠気に対する効果は低いと報告されています。

難治性のアレルギー性鼻炎にはレーザー治療や後鼻神経切断術と呼ばれる鼻内でのアレルギー反応を減少させる治療法もあります。そのほか、左右の鼻を隔てる壁が曲がっている場合(鼻中隔弯曲症)や慢性副鼻腔炎によってポリープができているなど物理的に鼻が狭い場合には手術治療が必要となります。最近の鼻の手術は内視鏡を使った負担の少ない手術が中心となっています。


鼻づまり治療のススメ

最近の調査では、世界全体で40%もの人がアレルギー性鼻炎もしくはその関連疾患に罹っていると報告されており、わが国でも鼻づまりによって睡眠が障害され、慢性的な眠気を感じている方が多くいると推察されます。鼻づまりや口呼吸を感じている方は、自分の鼻づまりの原因について正しく診断を受け、積極的に治療を受けられることをお勧めいたします。